日本と海外(ここでは主に欧米)の文化の違いはたくさんあります。
役所や銀行、交通機関や商業施設などの窓口係の対応もその1つです。
今回は、実際に欧米の窓口であったいくつかの経験談を踏まえ、日本と欧米の窓口係の違いなどについて触れたいと思います。
海外で勉強するにしても仕事をするにしても、必ず覚えておいていただきたい心得でもあります。
ぜひ最後までお付き合いください。
欧米では人によって言うことが違って当たり前?
ここでお話ししたい日本と欧米の違いとは、
「欧米の窓口では人によって言うことが違うことがよくある」
ということです。
もちろんちゃんと正しい情報を備えて、マニュアルに沿った対応をするところもありますが、そうではないことが決して少なくないので、注意が必要なのです。
どういう事なのか、実際に私が経験した事例をお話しします。
フランスの夜行列車に自転車を積むことはできるのか?
フランス南部を自転車旅行していた時のこと。
リヨンという街からマルセイユを経て、古都カルカッソンヌまで自転車で旅をしました。
自転車での行程を終えて、あとは電車に乗って帰るだけでした。
南部のトゥールーズからパリまでは夜行列車を使い、そこからはICE(インターシティエクスプレス)で6時間ほどかけてドイツの自宅まで辿り着く予定でした。
そのトゥールーズ駅のチケットカウンターでのこと。
夜行列車に自転車を乗せられるかと訊くと、「それはできない」というのです。
ヨーロッパでは自転車を電車に乗せることが日常的で、通勤の電車にも自転車をそのまま乗せられたりします。
なので夜行列車でも当然自転車を乗せるスペースが確保されているだろうと思っていたのです。
自転車が乗せられないのでは困るという事で、いったん窓口を離れて考えることにしました。
しかし休暇はあと明日1日しかなく、次の日の移動も考えると、やはりその夜行列車でパリまでいかなくてはなりません。
何か交渉の余地はないかと、もう一度カウンターに向かい、試しに今度は別の窓口係と話をしてみることにしました。
事情を説明するとなんと、自転車を乗せるのは全く問題ないと言うではありませんか。
最初の係員に聞いたときはあんなにはっきりと「No」という答えが返ってきたのに、別の係員に聞くだけでその答えが「Yes」になってしまったのです。
実際その夜行列車には、タイヤを外して輪行バッグに入れたりする必要もなく、そのまま自転車の形で乗せることができました。
何のことはない、窓口の彼女は「夜行列車に自転車を乗せることはできる」という事実を知らなかっただけだったのです。
アメリカではEU圏の運転免許でレンタカーが借りられる?
もう一つ似たような話を、今度は国を変えて。
アメリカでレンタカーを借りた時のことです。
私はEU圏の運転免許を持っているので、それを提示することでアメリカでも国外免許なしで運転ができます。(少なくとも以前はそうでしたが、現在はどうか分かりません。)
以前もEU免許を使ってアメリカでレンタカーを借りたことがあったので、日本の国外免許の用意はしていませんでした。
ところが、そのレンタカー会社の受付では、
「この免許じゃダメなんだけど、他の持ってない?」
というのです。
私は最近法律が変わったのかと少しドキッとしながらも、前回は大丈夫だったから確認してほしい、と頼んでみました。
そして別のスタッフに確認を取ってもらった結果、EU免許で車を借りることができたのです。
共通点は、さほど根拠もないのに「No」とはっきりと言い切るところ
いかがでしょうか?
最初の例では、鉄道会社の係員に
「列車に自転車は持ち込めません」
とはっきり言われているので、日本人的感覚では、
「列車に自転車は持ち込めないのか」
と思うほかありません。
どうしても、という事情がない限り、そのまま諦めてしまいかねないシチュエーションです。
アメリカのレンタカーの例でも同じことです。
どちらにも共通して言えることは、「No」という回答をはっきりとしていることです。
おそらく根拠も自信もなく、実際に間違っているにもかかわらず、です。
日本のサービスは「おもてなし」という言葉とともに世界的にも高く評価されています。
一方でマニュアル化されていて融通が利かないという負の特徴もあります。
その点において欧米の対応は、一人一人が自分で考えて対応するという傾向が強い分、個性や対応の良し悪しが生じやすいのかもしれません。
"自分で考えて対応する"
というと聞こえがいいですが、
"自分の判断で対応する"
というと急に危うい感じになってきませんか?
じゃあどうすればいい?
ではそのような人によって対応の差があることに対して、我々はどうしたらいいのでしょうか?
サービスに良し悪しのムラがある欧米では、それが前提なだけに客がサービスを評価できる「チップ」という習慣まであったりしますよね。
スタッフ・係員の対応は人によって違うのだという前提を持ってさえいれば、対処はそれほど難しくはないでしょう。
納得いかなければ隣の窓口に並びなおす
隣だと気まずければ離れた窓口でもいいですね。
念のため確認を取ってもらう
窓口が複数無い場合もありますし、別にわざわざ別の窓口に行かなくても、正直に話して確認を取ってもらう方法もあります。
むしろその方が確実ですね。
I'm terribly sorry but I need to be 100% sure. Could you double-check with your colleage just in case?
「大変申し訳ないのですが、100%の確証が欲しいんです。念のため同僚の方にも確認していただくことはできますか?」
のように話していただくといいかもしれません。
マネージャーを呼んでもらう
いわゆる「責任者呼んでこーい」というやつですが、これをやるとプライドを傷つけらて怒る人もいるので注意しましょう。
どうしても、という時は上のCould you~の文章に代えて、
Could I talk to your manager for confirmation by any chance?
「確認のために上司の方とも話をしたいのですが…」
といった感じが良いかと思います。
それも文化と楽しもう
こうしたサービスや対応の違いで不利益を被ってしまうと、どうしても「だから欧米は」とか「やっぱり日本が一番」とか思ってしまいがちですね。
そう思っても無理ない面も確かにあります。
ただそんな風にぼやいているよりは、「これも文化」と楽しんでしまう方がより健全で有益ではないかと私は思います。
もちろん、窓口係は正確な情報を提供してくれたほうがいいことは間違いありませんけど、ね。