さて。
英語力を上げるためのもっとも効率的な方法と言ったら、あなたは何を思い浮かべますか?
友達を作ってたくさん会話することでしょうか?
英単語を片っ端から頭に叩き込むことでしょうか?
英語のニュースや映画を一日中聞き続けること?
TOEICの高得点を目指して勉強すること?
もちろんどれも英語力の向上につながりますが、今回お伝えしたいのはもっと別のことです。
私はそれこそが、自分の英語力を上げてくれたものだと実感しています。
英語上達の最大の秘訣はこれだ
では結論から先に言います。
英語上達の最大の秘訣は「困ること」だと私は考えています。
もっと言えば、英語を話さなければならない環境下で「窮地に立たされる」ことです。
何だそんなことか、と思う方もいらっしゃると思います。
しかし私はどれだけ英語で困った経験を積んできたかが、英語の地力を向上させる大きな要素であると思っています。
では英語で「困る」とはどんなことで、どのように英語力の向上に寄与するのでしょうか?
旅先のホテルでエアコンが効かない?
ある南国のリゾートホテルに滞在したときのこと。
三ツ星くらいの(リゾートで三ツ星というと比較的低料金のホテルですね)気取らないホテルで部屋もそこそこだったのですが、チェックインしてしばらくしたあと、エアコンが全く効かないことに気づきました。
夏の暑い時期だったので、エアコンなしでは到底過ごすことなどできません。
しかたがないのでフロントへ降りて何とかしてもらおうと考えました。
当時は今より英語が不自由だったので、若干緊張もしつつ、伝える文章を組み立てながらフロントへと向かいました。
フロント係の女性は、私の英語を理解はしてくれた様子であるものの、解決へ向けて動く様子はありませんでした。
「もうしばらく様子を見て」とか「外が暑いからしかたないわね」とか、どうにも頼りない感じです。
頻繁に受ける類のクレームを何とかかわしてやり過ごしたい、といった素振りです。
日本だったら、とこういうとき考えてしまいますよね。
日本のホテルなら、部屋でエアコンが効かないなんてことがあろうものなら、申し訳ございませんを連呼しつつ、すぐに代わりの部屋を用意してくれることでしょう。
でも海外ではそう簡単にはいかないときがあります。
ここでひるんでしまうと、せっかくのバカンスの数日を、蒸し風呂のような部屋で過ごすような事態に冗談抜きで陥ってしまうのです。
私は拙い言葉を重ね、切々と、時には怒りの言葉さえもちりばめてそのフロント係と話しました。
具体的に何と言ったかまでは思い出せませんが、こういう時に難しい言葉は不必要で、文章はどんどんシンプルになっていきます。
We can not stay in that room.
(あんな部屋にはいられない)
I need you to do something.
(何とかしてください)
Please call your manager.
(上の人を呼んでください)
文法とか表現とかはとりあえず置いておいて「伝えること」に特化すると、意外とポンポン言葉が出てくることがあります。
こうした困ったシチュエーションを通ることで、英語を話すというのはきれいな文章を組み立てることではなく、意思を伝えあうことなんだと実感できたりします。
毎日英語で1対1の電話会議
また別の話。
以前海外現地法人に勤務していたのですが、あるプロジェクトの担当になり、別のブランチにいる担当者と1日1回、1対1のテレフォンカンファレンス(電話会議)をすることになりました。
毎日朝の10時くらいから、時間はその日のトピックによって決まり、長ければ1時間に及ぶこともありました。
それは数か月ほど続きました。
その当時の英語力は、時間はかかるものの相手の言う事を理解し、自分も必要十分な情報を相手に伝えることは(頑張れば)できるレベルでした。
それでも、毎日の電話会議はかなりストレスで、電話を切るとしばらくぐったりしてしまうくらいでした。
毎日続けるうちに慣れて平気になってきたかと言うと、実はその数か月の期間が終わる最後の一日までストレスを感じていました。
我々日本人が、電話で英語を操るというのはそれだけハードルが高いものなのではないでしょうか。
それでも得たものはたくさんありました。
技術的なところでいえば、
- 自分なりの間の取り方を覚えて、考える時間を確保することができるようになった
- 相手に理解されやすい話し方の順序が分かるようになった
など。
またそれと同じくらい大きかったのは、「自分の英語力で十分に電話で意思疎通ができる」という自信だったと思います。
あの毎日の電話会議をやってきたんだから、電話で伝え合えないことなどもはやあろうはずがない、という風に考えられるようになったのです。
旅先で怪我、モロッコで整形外科!?
こんなこともありました。
また少しさかのぼって、20代前半に友人と北アフリカで自転車旅行をした時のこと。
一人が膝を怪我してしまい、病院に行った方がいいという話になりました。
しかしそこはモロッコ。
さらに今のようにスマホやwi-fiもないので、必要な情報は人から得るしかありません。
北アフリカではフランス語かアラビア語が話せれば話が早いのですが、我々には下手な英語しかありません。
しかも当時は中学英語に毛が生えたくらいの英語力しかなく、病院を探すというのはなかなかハードルが高い課題でした。
しかしそうしないことには自転車旅行が成り立たなくなってしまうので、何とかして病院に行くしかないのです。
I want go to hospital.
(病院に行きたい)
hospitalは総合病院のようなものを指すのですが、そこは小さな町の道端だったので、訊かれた方も「?」という感じでした。
少しのやり取りがあって、会話の中でhospitalという単語からclinic(クリニック=科目で分かれた小規模な医療機関)へという修正がなされました。
すると当然、どんなクリニックに行きたいのか?となりますね。
そこは膝を指さして「knee(膝)」「injury(怪我)」などと単語を並べればOK。
あとは親切な町の人に近くまで案内してもらって事なきを得ました。
簡単なことですね。
まるで某テレビ番組の「初めての○○」という企画のようです。
最初の一歩を踏み出せば、ここでは中学生でも言える「I want to go to hospital」という簡単なセンテンスさえ伝えられれば、あとは何とかなります。
しかしそうした実感や自信を得られるのも、自分自身が困ったシチュエーションに陥り、そこで対処する経験を経てこそ、なのです。
英語で「困る」ことこそ英語の上達には最大の近道
海外にいると、仕事でも、観光でも、生活でも、困ることはたくさんあります。
全てが予定通りに運ぶことなんてまずありません。
そうした困ったシチュエーションに遭遇すると、自分で何とかしなきゃいけなくなります。
かっこつけてはいられないわけです。
英語を勉強していると文法が正しいかどうか、単語が適切かどうか、スペルが合っているかどうかばかりに気が行ってしまいますが、言葉の本来の目的は「伝える」ということです。
困ったシチュエーションに陥ったときは、自然とその「伝える」という一点にコミットすることができます。
それこそが「困る」ことが英語上達に欠かせない理由なのではないかと思います
そのためには外へ出ることが大事です。
それも、目的をもって外へ出ることです。
目的がなければ、困る前に「まあいいか」で終わってしまうからです。
果たさなければいけない目的があれば、そのために何とかしなきゃいけないので困るわけです。
英語でたくさん困ることは、後にその分だけ自分の自信になります。
目的をもって積極的に外へ出て、たくさん困ってみてください。